NPO法人 ニュースタート事務局関西

「カレーの作り方」髙橋淳敏

By , 2020年2月15日 10:00 AM

 最近は週に2,3回はカレーを作っている。家で週1回作り、あとはニュースタートの集まりも含めて、人の家とか店とかいろんなところに行って機会があれば、カレーを作ることにしている。カレーを食べることは嫌いではないが、とりわけ大好物でもなかった。でも、カレーを作るのは昔から好きだった。実家から出て、独り暮らしをして、初めて自分で作った料理は、野菜炒めを作ろうとしてカレーになった。野菜を大きく切りすぎてうまく炒まらず、そのフライパンに水を入れて煮物にしようとしたが、味が決まらなかった。それで、カレールーを買ってきて、それをフライパンの中で溶かしたらカレーになった。煮物にしたときに、砂糖やしょうゆをそこそこ入れていたので、あまりおいしくはなかった思い出はあるが、それでもカレーは失敗から生み出された。それからはカレーを作るときはルーを変えてみたり、ソースなどの調味料を足してみたりした。独り暮らしだったので、一度作れば3日くらいカレーになるか、ご飯と一緒にいつでも食べられるように冷凍庫にストックしたりした。残ったカレーを食パンと一緒に食べたり、昆布や鰹出汁で溶いてカレーうどんにしたり、、応用もできるし便利であった。なんというか当時も納得できるカレーではなかったが、具材や味も変えることができたのでよく作っていた。煮込んでいる時間が幸せだった。次にこだわったのが、たまねぎの炒め方だった。たまねぎをたくさん使い、あめ色になるまで30分でも1時間でも炒めた。最初に電子レンジで水分を飛ばしたり、塩を入れたり少量の水を入れるタイミングを計ったり工夫するようになって炒める時間は短くなっていった。今でも野菜を切るのは好きになれないが、たまねぎを炒める作業は楽しかった。だが、カレールーの中にすでに炒まったたまねぎが入っていたので、なんというか過剰なカレーになっていった。にんにくを入れたり、ショウガを入れたり、調味料や蜂蜜やインスタントコーヒーなどさまざまなものを試してみたが、コクを通り越してなんだかコッテリしたカレーになった。当時、北海道にいてスープカレーなるものが流行りだして、そのコッテリしたカレーをチキンスープに溶かし、野菜を別に素焼きにしてのせたこともあった。まだ北海道の地方タレントだった大泉洋がスープカレーの宣伝をしていて、スープカレーというと今でも彼の顔を思い出す。いや、彼の顔をみるとスープカレーを思い出すのだった。家ではカレーをよく作るし、親からの届く荷物にレトルトカレーが入っていることも多く、外で食べるときはカレーはできるだけ避けていた。外では安い食堂のカレーや立ち食いそばのカレーうどんをたまに食べるくらいであった。ネパールやインドの人がナンを出すカレー屋さんがこのころからだんだんと増えていったのを横目で見ていた。

 

 それでもカレーをカレー粉から作ることは数えるほどしかなかった。あまりうまくできなかったし、高価で小売にされているカレー粉はカレーを作るためにあるのではなく、他の料理をカレー味にするためのものとして考えていた。今のように週2,3回カレーを作るようになったのは、知り合いがベンガル料理のレシピ本を出したのが大きかった。彼が北インドのベンガル地域で下宿していたときに、そこの家族の食事を担当して覚えたようなレシピで、実際に彼の大阪の家でご馳走になって、とてもおいしかったのだった。それで、スパイスをそろえて作ってみると、とてもシンプルなのだが奥深いというか、今まで作ってきたカレーはカレーで美味しいのだが、大げさに言うとイギリスから海軍経由で伝わった日本のカレーライスは間違えではないのかと、インドからやり直そうと思わせるようなものであった。それにスパイスは漢方のようなもので、自律神経系によい効果があるみたい。昔から作文や論文に、「カレーの作り方」を書いて、お茶を濁すなんて冗談があったが、カレーの作り方は十分に作文や論文に値すると思ったのが、今回この文章を書こうと思い至ったところではある。とはいえ、この文章を書きながら考えていたことは、引きこもる行為にはそれぞれの理由があり、それぞれの都合が解消されれば引きこもる行為は収束することになるが、引きこもる原因はそれぞれにあるわけではなく社会問題であるということだった。引きこもる原因は分かったところで、その原因はなかなかに取り除いたりすることがすぐにできるものではない。ただ、原因が理解できなければ、引きこもらなければならないそれぞれの都合や、引きこもるという行為を続ける理由は分からない。親や社会はコミュニケーションがとれないことを問題にするが、コミュニケーションをとらない理由や都合はちゃんと本人にあって、コミュニケーションを取れない原因は本人も気づいていないことも多いが、親や社会の側にある。私がカレーを作る理由は以上に書いたようなことでもあるが、私が現在カレーを作り続けている原因は他にある。その結果が実れば、またどこかでお知らせすることはあるだろう。

 

 マスタードオイルを熱したところに、ホールスパイス(カルダモン、クローブ、シナモン、ベイリーフ、ブラックペッパー、クミンシード、フェンネルシード、パクチーの根っこなど)をお好みで焦げないように投入します。それで、たまねぎを入れよく炒めます。塩や砂糖をここで加えてもいいでしょう。次に、にんにくとしょうがを入れます。水分を飛ばすようにして炒めます。ここで、鶏肉なんかのたんぱく質を入れてまた炒めます。ここでパウダースパイス(ターメリック、クミン、コリアンダー、レッドチリ、パプリカなど)を加えます。その後、トマトを加えてもいいでしょう。なくても美味しいです。炒めて水分を飛ばします。最後、水を適量加えて、お好みの野菜などを入れて煮込んで、塩加減を調整したら、できあがり。

2020年2月14日 髙橋淳敏

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