NPO法人 ニュースタート事務局関西

「人口減少と引きこもり」高橋淳敏

By , 2016年1月17日 10:00 AM

私たちは長く広い世界史的に見て重大な変化の時代に生きているのだろう。それは、世界史で習うような、どの時代のどの国のことも参考にならなくて、もしかしたらかつてあったとされるアトランティス大陸やマヤ文明など理由がわからず滅びた国を参照するしかないのかもしれない。一つは、世界全体で爆発的に人口が増えたこの100年であり、そしてさらなる難局でこれからの大事は、歴史上初めて人口減少という事態に直面することである。例えるなら、私たちはジワジワと確実な急上昇を登りつめ、その頂点に達してこれから急降下をする直前なのだ。

 

世界的に見れば出生数の増加(人口増加も)は終わってはいないが、この100年の上昇具合に比べると減りはしなくとも、その上昇率は想像しやすくなった。2060年には100億人を超えると聞くと大変なことに思うが、今でも70億人を超えていて、1950年には25億人しかいなかったのだから、上昇率は変わらないかむしろ穏やかなになるくらいかもしれない。中国は今までコントロールしてきたのを転じ、資本主義国家として国力を保つために一人っ子政策を解除した。世界的に見た今後の食糧やエネルギー不足の問題などが取りざたされているが、それも大きな問題であるが、今でも行き届いていないことの方が問題で、この点は先のことよりも今のことをまず解決すべきであろう。

 

さてこれから直面するさらなる未踏の大問題は足元にある。それは先進諸国で経験し始めている出生数の減少による人口減少の問題である。世界的に見て新興国などと言われている国が人口急増していることによってか、この現象は緩やかに起こると考えがちであった。でもそれは日本など移民を受け入れもしないような国にとっては大きな間違いであって、急増し終わった今頃を頂点として、人口は急激に減っていくことになるだろう。単純に考えれば分かることだが、今の30代40代が大した数の子どもを産むこともなかったのに、その少なくなった子どもたちが急に大家族志向になったりで、たくさん子どもを産むと考えられるだろうか。もちろん子どもがどのように生きていくかは親の知れたことではないし、初めての経験であるのでどうなるかはわからない。だが、恋愛すらしない10代20代の若者と正月早々にある新聞で特集があったのだが、むしろ一人一人を見ても結婚する人も減っているようで、想像を上回るようにして出産したい人も減っているようである。問題は特殊出生率(1人女性が生涯に産む子どもの数)が減れば、増えたときと同じ加速度でもって、数としては今度は逆に倍々に子どもは激減していくことにある。そして、これはもはや過ぎた話しであって、人が減るのはこれからが本番となる。

 

人口が減ることや、出生率が減ることなどは、現在にいたる社会の在り方の問題であって、個人の問題ではない。減ること自体が問題なのではなく、現実減っていくことに社会として国として対応できないことが大きな問題なのである。なにしろ初めてのことであるし、周りに経験もされていない事態である。事故のようなことかもしれなくて、的確に対応するのが無理なのかもしれないが、当然のようにこの対応を間違えれば、少なくとも日本という国は絶滅することになるだろう。そして、今の政府や国会、自治体、社会の対応はどうやったって間違っているようである。分かりやすいところで一つは、人口が減少すればGDPは当然減っていく。減らなくとも、維持するのはかなり困難になる。なのに、現在の政府はGDPを上げることを目標にしている。この話は、人口が増えている時代の政策をただ踏襲したいだけに過ぎない。一億総活躍などと言って、子育て世代の女性や働き終えた高齢者など今働いていない人を働かせることによって、人口減少をカバーしようということなのだろうが、根本的に問題解決にならない。子育て世代の女性が多少働いたところで、高齢者に働かせたところで、倍々に子どもは減っていき高齢者はもとより子育て世代の女性の数も減っていくのだから、焼け石に水といった話しだろう。何よりも、引きこもりやニートという面倒な若者の話しは、ここでは全く相手にされず、即席の労働力を利用する政策でしかない。後は、それでもGDPを上げたいのなら、お金にお金を産ませるバブルを作り出すくらいのものだが、当然これはもう最悪の事態ということになる。すでに国は閉じられ、将来世代へのつけは取り返しのつかないものとなっている。そもそも、GDPを上げることは行政のやる仕事ではない。GDPが下がった中で税収が下がった中で、社会保障や将来の国の運営をどうしていくかをまじめに考えるのが今の政府の仕事だろう。

 

順調に人口が増えていくかにみえたアメリカですら特殊出生率が2.0を下回ってきている。これは予想を下回っているようだ。貧乏子だくさんというのはある真理なのかもしれない。それでもかつての未来は明るかったのだ。いま他国と連携して行き過ぎた資本主義経済と向き合おうとするのでもなければ、お先真っ暗である。こうなれば、大量に移民を受け入れるしかないのではないか。もはや日本に経済的なうまみもないが、客として外国人を利用することばかり考えるのではなく、もっと受け入れて多文化交流するがいいだろう。そうでもしなければまた追い込まれ、日本は自爆テロという名の戦争をしなくてはならなくなるだろう。そうなればもはや引きこもりは問題でもなくなるが、戦争はしてはいけない。

2016,1,15 高橋 淳敏

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