NPO法人 ニュースタート事務局関西

「行き詰まり」  髙橋淳敏

By , 2015年10月18日 10:00 AM

高齢者や障がい者福祉、子どもの貧困、非正規化労働など、私たちはかつてよりも孤立させられている。それも「自ら望んで」と分断が巧妙になっている。困って助けを求めようとした時に、かまってくれる人はいないし、そもそも助けを求められない。自分を守るための監視はしても、どうやったら助かるかも分からない。人間不信。とにかくこの状況から脱したい。そんな時には制度に頼るしかないのだろうが、福祉が充実しているわけでもない。国の歳出は限界を超えている、それでも問題の垣根を越えて声を上げていくしかない。いったい、私たちの生をむしばんでいるものは何なんだろうか。生きようとする活力を日々そぐものは何なのか。そのようなことを引きこもり問題を通じて考える日々。

 

どのようにしてまかり通っているのか分からないが、国の一般会計の収入の多くをいつの間にか国債によって、まかなうことになっている。バブル以前はたぶんあまり目立ったものでもなかったのだろうが、バブル崩壊直後1990年初頭の2年間くらいは国債に頼ることのない収入になっている。それ以後は、その時の収入の水準を保つために、税金などで足らない分を再び国債で補てんしだす。そして、今となっては収入の半分ぐらいを国債によってまかなっている。知っての通り、当然借金は雪だるま式に増えていく。手元には1995年からの推移しかないが、この借金は減ったことは一度もない。ここで何が問題かというと、借金の多さではなく、国は今でもバブル期の運営を維持しているということで、それがためにずっと国債に頼るしかない体質となっていることだ。失われた20年というのは単に経済成長しなくなったということではなく、この国の運営方針がその当時のままで、できもしない幻想を追っているからこそ、失われ続けているのではなかろうか。

 

アナリストと言われる人や、高度経済成長期を支えてきた人なんかの話を聞くと、それでも日本は国債を国内で買っているので大丈夫だなんて話をする。その人が国債を持っていて債権を放棄するからというなら話は別(いやもはや利息だけでも大変だ)だが、そうでもないなら結局は未来の人に対する借金となる。国会は毎年特例公債法というのを制定し国債を発行し、未来を日々けずらなければ私たちは今を生きていけない体質となっているし、社会保障などそのような運営を余儀なくされる。今を削っているのではなくて未来を削っている。そして、削られた未来によって現在が借金によって縛られる。まだ見ぬ希望を食って。それに加えて、まだ見ぬ人のためにと道路なんかを作っているのであれば、目も当てられない。現在の問題に国債で得た金を使わず、もうかりもしない博打のような投資金融経済を前に打つ手はないし、もうさんざんだ。

 

国会議員らがやっている議会なんてものは、ここ60年何にも変わっておらず、望む望まないにしても彼らはずっと大企業や財閥を優遇するための政局をだけ戦っていて、われわれはその茶番を飽きるほどにずっと見させられている。彼らにとっての庶民とは、未だに期待値としても大企業で働く正社員のことなのだ。引きこもりの話しなんていうのは、その正社員家族の子どもの問題でしかなく、ニート問題は単に大企業の下請け非正規労働者を増やすための訓練のことでしかない。

 

企業社会で役に立たないものは外へ出る価値はないと、国の運営に任せていれば引きこもりは病者や障がい者とされるのがおちだか、家がなくなればそのような社会で逃げ場もなく、勝ち目のない戦いを永遠と強いられることになる。そもそも、親の家がなければ生きていけない社会で、自立なんてことがどのようにして可能だと言えるだろうか。子どもや高齢者に対しても容赦ない。高齢者の口を封じ、国民教育なんてことがまた叫ばれようとしているが、将来につけを残す国がその借金の返し方を教えられなければ、踏み倒し方しか教育できないはずだ。国が一丸となって逃げ場もなくなれば、いじめるものがそのつもりはなくとも、いじめられるものは死をもって自らの生の決断しようと考えてしまうかもしれない。お金も身寄りもない高齢者は、今後はもっと過酷で孤独な生活を強いられよう。

 

財務省のホームページで、国の一般会計を月収40万円の一般家庭の会計にたとえたものがある。この話、ずいぶん前にも聞いたことがあったが、まさか財務省が出しているものだとは知らないかったので、改めて紹介します。おぞましい家の絵があって図で説明してある。平成23年度、40万円の収入で、75万円の支出、ローンの残高は6348万円だと。ここから読み取れるものは、国の財務状況は大変なので、皆さんできるだけ自己責任で国を頼らずやってください、税金いっぱいとっても文句言わないで、いっぱい稼いでください、てなもんだろうか。

 

私たちはむしばまれた未来を前に今を戦わざるをえない。希望は過去の自分たちによって今も失われ続けている。ギリシャのようにデフォルト宣言することもままならない。行く手は過去となる現在によって完全に阻まれている。

 

家族をひらき

学校を解体し

仕事を分け与え

引きこもりを解放せよ

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