NPO法人 ニュースタート事務局関西

新たな自立へ

By , 2014年7月25日 9:47 AM

親から離れた自立した生活をしたい
先日、脳性麻痺による重度の障害を持っている清村健人くんに、ルームシェアの話をするためにお会いした。もともとは健人くんのお母さんの相談にのっていたのだが、ニュースタートの共同生活寮の卒寮後、健人くんとのルームシェアに関心を持った寮生がいたので、皆で会って話し合う場が持たれたのだった。健人くんの生活を支えているヘルパーの事業所の人2名と健人くんのお母さん、ニュースタートのスタッフは私と福神さん、そして一人暮らしを考えている二人。慎重な話し合いであったが、健人くんが場を和ませたり、皆でガラス細工を作ったりでいい雰囲気であった。お互い印象は良かったようで、その後も健人くんのお母さんと私で連絡を取り合いながら具体的に話を進めていたが、市役所に行ったところで、手続き上の問題に行き詰まりすぐには実現できず、とりあえずはそれぞれでやっていく話となった。それで、その寮生は卒寮して近くで一人暮らしをすることになり、健人くんは親から離れた生活を福祉施設で探していくことになった。健人くんは、自分だけでは移動することもご飯を食べることもできない。それでも親から離れた自立した生活をしたい思いに私は突き動かされたし、自分の障害を逆手にも取って社会に役立つことをと行動している彼を今後も応援したい。でも、その施設というのは空きが全くないようで、あったとしても施設に入りご飯を食べる時間や寝る時間が決まったような管理された生活は、健人くんの本意ではないと聞いた。
気心の知れた生活が抑圧された生活へ
一人暮らしをして引きこもっている人もいるが、引きこもっている場合は親元(実家ぐらし)にいる人が多い。そういう人に、親から離れた生活をすすめると、それは魅力的なようでしたくないとは言わないのだが、今すぐにとはならないことがある。たいがいは自分で経済的に生活ができるようになってからという回答であるが、じゃあそれほど親と離れる生活を望んでいないかと言えばそうではなかったりする。自分だけでは自立した生活をおくることが不可能であっても、それでも自立した生活を希望もってやろうとしている健人くんと会って、親とは離れて生活をする必要を改めて私は感じたのだった。大家族だったものが核家族まで解体され、ずっと一緒に生活していた親と成人くらいになって離れて生活がしたいというのは、かなり基本的な欲求であるようだ。親と子が離れてしまう、家族が大事であるというドラマはよくあるが、引きこもりの物語は親と子が離れて生活ができない悲劇があるように考えている。気持ちは遠い昔に離れてしまっているのに、生活を共にしないといけない話で、親はその子供の気持の回復を望み諦め、子供は経済的に物理的に動けないので諦める。気心の知れた関係の少しの我慢だと思っていた生活が、人生における長い期間の抑圧された生活になってしまう。
今の親が子供だった頃は、まだその親も信頼できそうな社会というものがあったり、何よりも親元にいるよりも出たほうが物質的に暮らしは良くなったりしたものだから、自立しようという気持ちが芽生え、育つ環境はあった。物質的に豊かになることが幸せになる必要条件だと、経済成長のころは皆が了解していたし、それを実現していける時代でもあったので、そのような形での自立出来た人が多かったと考える。現在は物質的に豊かになることだけが幸せと思えないが何を信じたらいいかも分からず、親元を離れたところで経済的には貧しい暮らしとなり、親元にいて個室があったりするものだから、何のために外に出ていくのか分からなく、そのようなことを一人考えるだけ歯止めがかかり、自立する芽はあっても育たずその場で枯れてしまっている。
いろいろな人と関われる豊かさと自立
健人くんと違って、健常者と言われる人は、一人でなんでもできるような自立を強いられる。でもその根本は、人に迷惑をかけたくなかったり、関わりたくなかったり無関心であるだけではないのか?もしそのようなことが目的で自立ということを考えているのならば、引きこもっていればいい話なのだが、いろんな人と好きなように関われる豊かさがあっていいように思う。求められる自立の形は、時代によって変わってきている。私たちが今やっているニュースタートの共同生活寮は、今の時代における昔とは違った自立の形を創りだそうと思ってやっています。

共同生活寮生募集中です。
行事などは多いですが、それぞれ自由な生活をしています。個室が用意されています。外にアルバイトに行く人もあれば、中で用意したプログラムを使う人もあります。掃除などの役割分担はみんなで決めたり、週に一度はスタッフも含めご飯を作るような日もあります。時間をかけ、人や社会を理解し、自分しかできないことを形にしていくことが目的です。寮費など負担がかかりますので、基本的には親の理解が必要です。

2014年7月17日 高橋淳敏

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