NPO法人 ニュースタート事務局関西

「コミュニケーションは手段でもない」髙橋淳敏

By , 2022年8月20日 5:00 PM

コミュニケーションは手段でもない

 コミュニケーションは日本語で、意思疎通と訳されるのか、交流や相互理解などの意味なのか定かではないが、外来語で今の日本社会になじんでいる言葉の一つである。前にここでコミュニケーションはコト(事)であり、民主主義国家の権力に対抗しうる唯一の手段であるようなことを書いたこともあったが、そのコミュニケーションは一般的には手段として考えられているようだ。例えば、他人を理解する手段としてコミュニケーションがあるといったり、何かの作業をするためにコミュニケーションが大事だとか、考え方が違う人たちはコミュニケーションが足りないとか、選挙など。コミュニケーションは、仲良くなるとか理解するとか上手くやるなど何か目的があって、その手段のように思われている。だから、例えばコミュニケーションに障害があるなんて考えが出てくる。コミュニケーションに障害のある人は、他人を理解することが難しいとか、人と協力ができないとか、仲良くなれないとか、手段であるコミュニケーションに問題を抱える個人という話しになる。

 さて、先に挙げたコミュニケーションの日本語訳になっている意思疎通とか交流とか相互理解というのは、手段としてだけあるだろうか。例えば手段と目的を別に考えるような場合は、コミュニケーション自体が目的であることも多いのではないか。この辺は意見が分かれると思うが、少なくとも私は友達と会って話したりすることや、違う考えを持った人を理解しようとすること、非言語的なコミュニケーションなら猶更、それ自体が生きる目的と言ってもいいこともある。むしろ、勉強や仕事や作業なんかがコミュニケーションの手段であって、コミュニケーションこそが生活の目的のように考えることもできる。恋愛なんかがそうであるように、私たちは目の前にいる人をただ知りたいと思ったり、仲良くなりたいと思ったりして、話したり聞いたりする。そこに他の目的があったりはするが、その目的が明確であればそれらは説得や聴取であったり、指示など他の言葉に代わるが、意思疎通や交流や相互理解が目的であるときこそコミュニケーションは、他に代わりのきかない言葉として使われたのではないだろうか。コミュニケーションが双方の目的であれば、上手くできなかったときはどちらか一方の責任ではない。どちらか一方に障害があるのではない。コミュニケーションが目的ならば、お互いが協力してその障害を乗り越えるか、取り除く必要がある。コミュニケーションが上手くいかないことはあるが、それはどちらか一方に責任や障害があるわけではない。ただ、このようにコミュニケーションが目的であるという考え方自体が、それこそコミュニケーションを手段としてばかり使っている私たちの社会や組織において、コミュニケーションに障害を持っている考えられてしまいがちではある。

 

 それで、コミュニケーションに障害を持っていると言われてしまう人は、その場や組織にいる多数の人と目的を共有していないと考えることができる。何らかの作業や目的を持った人が集まる中で、そこで意思疎通することを目的とする人は、他の人はそれを手段としているのでコミュニケーションを割り切るが、割り切ることができない人が作業をうまくやれなくなるのは想像しやすい。あるいは、友達になりたいとか仲良くなりたいということが目的なのに、仲良くなるのは手段であって何かやり遂げることが目的と考えている相手であれば、その関係が上手くいかなくなることもあるだろう。職場でコミュニケーションを目的にしてはいけないのかもしれないが、そこには少なからず意思伝達があるわけで、それらを割り切って考えられないことは誰にも多々ある。職場や学校で理由もなく落ち込んでいたり、機嫌が悪かったり、その場以外でのコミュニケーションは簡単に持ち込まれていることになる。コミュニケーションを目的にしたい人は、そういう他人の感情にとても敏感であったりもする。私たちの生きる目的とも考えられるコミュニケーションはどこにあるというのか。友達関係?恋人関係?親子関係?純粋な目的としてのコミュニケーションなんてどこにもないのではないか。違った考えの人や、違う言語の人、理解しがたい人とのコミュニケーションが自分を知ることであり、豊かさにつながるように、それが職場であっても付き合いの長い人とのコミュニケーションが手段でしかないというのは、なかなかに不可能なことなのではないだろうか。

 私たちは普段、自分のことは自分が一番分かっていると思っている。でも、多くの場合はそんなことはない。もちろん誰か特定の人が自分のことを自分以上に分かるようなことはあまりないだろうが、自分とは違う考えを持ったような人が、自分のことを自分以上に分かっているようなことはある。差別されている人たちのことを差別する側は理解したいと思うが、差別されている人たちのことを知って分かるのは、差別する方の無知であったりする。差別問題は差別する自分たちのことを知らないのが問題である。差別される側に差別問題があったわけではなかった。短い論考ではあるが、要するに何が言いたかったかといえば、手段としてのコミュニケーションが上手くできないのは、能力や障害なんかのせいではなく目的が違うだけの話しであって、それは個人が悪いのではない。むしろ、コミュニケーションを目的とするならば、手段としてのコミュニケーションが下手に思われても何ら恥じることもなく、ただそれを目的として外へ出ていろんな人と交流して過ごすのがいいんじゃないか。

2022年8月20日 髙橋 淳敏

7月鍋の会報告

By , 2022年8月7日 8:45 AM

7月24日(日)真夏の鍋の会カフェコモンズで開催されました。7名参加でした。毎年この季節になると鍋の会とはいうものの「今日鍋やります…?」という言葉から始まることになる。実際冷たい鍋をするとなると前もって冷やしたり面倒そう…とあきらめるときも多いのですが今日は「そうめん」というキーワードが出てきたので割ととんとん拍子にそうめん鍋へと考えがまとまりました。そうと決まれば買い物と準備に取り掛かります。土鍋にゆでたそうめんを入れて、鶏ミンチや卵焼き、ナスやシイタケなど甘辛く焼いた具材を載せて、あとはみょうがやきゅうりを乗せてめんつゆをかけて氷を乗せて出来上がりました!!涼し気でそれでいて土鍋に入ったそうめんなべは想像以上に食べやすく、あっというまにお腹ぱんぱんになりました。美味しかったです。久しぶりの参加の方もいて暑い日でしたがみんなで集まれて良かったです。(くみこ)

7月例会報告

By , 2022年8月7日 8:44 AM

7月16日(土)17名の参加がありました。そのうちご家族の方は5名でした。
こちらから冒頭少し話をしたあと、皆様からお話聞く中で意見を交換したりしました。
引きこもりの状態になるまでの生き方として、学生から働いた経験のないまま動けなくなってしまう場合と、一度働いたことがある上で続けられなくなり辞めてからこもりがちになってしまうという場合がある。今回も参加された家族の方から両方のお話がありました。一度働いた経験があり上手くいかなくなってやめることになった時の次動き出す際に感じるしんどさと、一度も働いたことがなく想像だけで膨らむ働くことへの怖さはまた違うと思いますが、どちらにも必要なのは親以外の大人に出会っていくことでしかないと感じました。それはなぜかというと、一度働いて社会に出た人はその時に出会った、うまくやれなかった人とはまた全く違う価値観を持った人間がたくさんいるんだということを知って、一緒に何かをする中で出会っていければ、希望や外への関心を持つことができるだろうから。まだ働いた経験がない人にとっては詳しく知る唯一の大人が親だけ、その価値観の中で育った本人にとっては絶対的な正解の姿になってしまっているからそうではないことを知るために。
 親からの心配や願いとしては、外に関心を持っていないのではないか。遊びでもいいから何かしたいこと見つけて欲しい。楽しく暮らしてほしい。大学や学校も行かなくてもいい。仕事も今すぐはしなくていい。という声をよく聞きます。親は子に甘いし、子も親が言うことを聞いてくれるとわかっている、思い通りになる相手といるときに、子は意思決定なんてできるだろうか。自分と考え方も違う思い通りにならない他人と接するときに初めて自分はどうするか、どうしたいかが出てくる。親と子だけの関係だけではいつもでたっても何がしたいかはわからないのかもしれない。(くみこ)

8月の定例会◆(不登校・引きこもり・ニートを考える会)

By , 2022年7月17日 10:00 AM

8月の定例会◆(不登校・引きこもり・ニートを考える会)

8月20日(土)14時から (281回定例会)
場所:クロスパル高槻 4階 第4会議室
当事者・保護者・支援者問わない相談、交流、学びの場です。
参加希望の方は事務局までお申込みください。詳細はこちら
※参加者は中部から西日本全域にわたります。遠方の方もご遠慮なく。
【高槻市青少年センターと共催で行っています】

 

「廃墟と化したワンダーランド」髙橋淳敏

By , 2022年7月16日 5:00 PM

廃墟と化したワンダーランド

 錆びついてか動かない古い器具、うるさいだけで面白くない遊具、大した広場やベンチすらなく、辺りはコンクリートやブロックで一面埋め尽くされているが、それが分からないほどにすき間から雑草が生えている。誰もが見たことがあって、想像することができる廃墟と化した施設。かつては、隔離してもらうための高い入場料や使用料を払って、理解しがたいドラマが展開される部屋に詰められたり、変な乗り物に乗せられたりした。それだからか、退廃はしていてもこの奔放な元施設の空気の方が、私にはまだましに思える。3,40年も前の昔話ではあるが、ただの人混みであっても、それは今の空気とは違った。日常的に誰彼となく生まれてくる「活気」や、近所のほとんどの人たちが楽しみに集まった業者に頼まない手作りの夏祭りを、今の子どもたちは知らない。だがこの活気が消えた「空気」なら、子どもたちはよく知っている。経済屋や政治屋たちは、かつてあった「活気」を取り戻そうと、何丁目かの夕日を再現するための古い器具や遊具を指さしては、そこで働けばいいし、気に入らないのなら新調すればいいなんてことを言うけども、子どもたちはこの退廃した「空気」に詳しいので、大人たちの言うことが単なるまやかしであることを、どこか分かって騙されたふりをしている。そもそも活気がないから作りだそうとしている空気に慣れている。いつの時代も大人が入り込むことのできない子どもたちの青春はある。最近の経済屋や政治屋は金のこと以外は考える物差しがなくて、もっと何も考えなくなった。インバウンドやらIRやらを次世代のためと言いながら。望まれてもいない場所に駅を新設し、近隣と競争して消費者をかき集めては、新たな商業地や居住地になる街をでっちあげ、箱物資産価値を捏造している。その昔、施設ばかり立ててその中身が何もないことを箱物行政と呼んでいたが、現在は老朽化や人口減少などを理由に既存箱物を縮小新設し、そうやって作った余剰地も含めた不動産金融業に行政が乗っかっている。誰も夢にも見ていない幻の開発が善い行いかのごとく、しめやかに金が金を産み続ける。いくらお金をもっても、貯金があったとしても、皆が貧しい時代になった。

 なぜにこんな社会になったのか、今に始まったことなのか。2,30年前には「景気」のせいだと言われていた。バブルが崩壊し不景気になったせいで、活気はなくなりみんな「元気」もなくなったと。だから、「景気」さえ良くなれば、また元のように元気を取り戻すことを多くの人が信じていた。戦争直後、もっとも貧しい不景気を乗り越えてきたのだから、必ずや同じように景気はまた自然に回復し、日本経済は元気になるはずだと。多くの人がそのようなドラマを懐かしみ共有したがっていた。今でも、ネット産業や仮想通貨などとは言ってはいるが、基本的には変わっていない。もうそろそろこの

ワンダーランドから抜け出さなくては不味いのではないか。それが間違っていたせいで10年20年と経済は失われ続けて、今は30年か?解放された遊園地のすき間から伸びた雑草のごとく、奔放に生きることもできるが、ここは人が生活する場所ではない。この古き悪き時代を脱出しなくてはならない。では何が間違っていたのか、まずはその順番、景気が悪くなったから元気がなくなったのか、元気がなくなって景気が悪くなったのかについてを正さなくてはならない。当然、後者に理がある。なぜなら、戦争が終わったから人は明日に希望をもてるようになり、子どもがたくさん産まれ、貧しくとも人は元気になり、そして景気は良くなっていったのだったからだ。景気が良くなって人が元気になるというのは嘘である。むしろ、景気が良くなればだんだん元気がなくなっていくというのが、高度経済成長やバブルなんかの歴史が証明しているではないか。大金を手にすれば、アドレナリンが分泌されるようなことは、やがてその大金を守らなくてはならない抑うつに変わるか、投機や博打などの過剰興奮依存へと変わるしかない。それは人が元気を失うことである。バブルは破滅的な遊びであったし、24時間戦えますかなんてテレビCMで言ってたのだから、その時代の大人たちは残りの元気を振り絞って、景気を支えようとしたのだ。

 先進国や新興国なんて言われた国々の多くは、歴史的には一つの到達を経験しているのだろうし、これほどの規模で衣食住に満たされることはかつてなかった。もうパンぐらいであれば、分け与えることもなく、誰かが少しでも働けば、他人からでも一日一人一個くらいは廻ってくる生産や流通がある。それが過剰とも偏向しているともいえるが、物質的に充足した世界はすでにある。私たちは何のために競争するのか、今までの競争は何だったのか、より分からなくなってきている。バブル崩壊前、一億総中産階級と言われ、一つの到達を経験した日本では、関係性の希薄とか人の心が問題になった。物質的には満たされても、人の生の拡充の頭打ちがその時代にはあった。そして希望が無くなってから、だいぶと経つ。私たちが元気がないのは景気のせいではなく、ただ希望がないからではないか?私たちは今一度、経済成長という間違いから学ばなくてはならない。

2022年7月16日 髙橋淳敏
 

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