NPO法人 ニュースタート事務局関西

「数によって人生を翻弄されないために(生物でもない無生物でもないウィルスの席巻)」高橋淳敏

By , 2020年12月19日 8:11 PM

 「ひきこもり」の人数は、100万人とも200万人とも言われて久しいが、この20年でも高齢化や、家庭環境、社会状況によっても個々の現れ方は変化してきている。若年層の雇用・学習環境は改善されてもおらず、若年層だった人たちの高齢化、一旦就職した人たちや障害者就労した後の引きこもりなど。「ひきこもり」の定義(顕著なのは年齢制限)も曖昧になっているが、年金受給者の「巣ごもり」状況が特に高齢者においては急増傾向にあり、ひきこもり問題はいよいよ日本社会における本質的な問題として、根本から問い直すべきことになったと考えている。とは言え、ひきこもり問題を考えるときにその数に翻弄されることなく、一人ひとりに現れるその様態を知っていることが肝であり、大きな問題の根本を考えるのにも大事なことになる。引きこもり問題の解決は、一人ひとりの生や希少な関係性においてこそ、実現していくのである。

 数年前に、HPVワクチンの薬害訴訟で国や製薬会社を訴えた裁判を傍聴しにいったことがあった。私の関心は裁判の行方もさることながら、引きこもり問題において多種多様なアレルギーやアトピー、膠原病、朝起きられないなどの自律神経系に纏わる困りごとをよく聞いていて、免疫なども含めた身体的反応が今の社会構造や生活の中でどのようにして起こるのかに関心があった。例えば親や医者なんかは、朝起きられないのは朝に起きるような努力をしないからだというような根性論というかトートロジーを、さじを投げるようにして諭すことがあるわけだが、引きこもり問題は「ひきこもり」が出れば解決するなんて自己責任的言説は議論する意味はない。今でも、ワクチン接種が直接的に発達障害の原因だとは考えていないが、裁判を傍聴して気になったことの一つはワクチン接種における副反応(ワクチンの場合「副作用」とは言わない)は、さまざまな症状として表れ、その症状の多くは身に覚えがあるというか、私たちの周りの人から聞く身体的な困りごとに似ているのだった。そこで挙げられていた副反応とされている一部を紹介すると、感覚系障害(激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、光過敏など)、運動系障害(寝たきり、全身麻痺、脱力、歩行困難、痙攣など)、自律神経・内分泌系障害(失神、発熱、月経障害、過呼吸、睡眠障害など)認知・情動系障害(記憶障害、倦怠感、疲労感など)。副反応は、直接ウィルス感染やワクチン接種などによって起きるのではなく、それら抗原に似たものが体内に侵入したときにできる抗体によって引き起こされるようなもので、個人差があり晩発性の症状も多く、ワクチン接種によるものとの因果関係を示すのが副作用よりも難しい。とはいえ、このワクチンを国は2013年から数年間、緊急促進事業による公費助成を行いほぼ無償で受けられるようにし、積極的勧奨がされ多くの若年女性が接種した。厚生労働省は「祖父江班調査」を自らで行い、HPVワクチン接種歴のない人にも多様な症状を呈するものが一定数存在する研究調査をして、副反応との因果関係がないことを証明しようとするのだが、これは俗に言う無いことの証明で無理があり、因果関係があることもないことも言えない学問的にも使えない無駄な調査結果だった。それで裁判は、HPVワクチン接種と副反応との因果関係が争点になっていた。

 一方で産婦人科医や製薬会社などは、HPVワクチンにより子宮頸がんに懸かる人の命を救えるとして、子宮頸がんワクチン接種を広めたいと、少なくない医者たちは日本における摂取率の低さを嘆いているようだ。ワクチンによって予防できる感染による癌は珍しく、多少の副反応があったとしても子宮頸がんに罹患する人を減らしたい(HPVワクチンによって発症が防げるのは半数ほどでしかないよう)のだろうが、それでは数によって翻弄される議論となり、簡単に言えば副反応を診る医者は接種に反対し、子宮頸がんを診る医者は接種に賛成するくらいで結論はでない。ちなみにHPVワクチン接種による副反応は、とりわけ深刻な重篤例の副反応報告が多いのだが、どのようなワクチンであっても副反応は報告されており、HPVワクチンほどでなくとも重篤例は存在している。ワクチンの晩発性の軽症反応ともなればほとんどその因果関係はわからないだろう。それで気になって調べてみると10年くらい前に私の子どもらが受けた予防接種はBCG、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎であって、最近知人の乳幼児が受ける予防接種はそれに加えて、ヒブ、小児肺炎球菌、B型肝炎、ロタ、水疱瘡だと聞いた。最近10年くらいで勧奨されている予防接種の種類が2倍弱になっていて不安になった。それだけの抗体を身体の中にあらかじめ生成させるわけだから、人体改造をさせられている気にもなる。それ以上に不安なのは、この事実は出産した親くらいしか知らなく、多くは育児を一人で担っている新生児のお母さんくらいしか知らないのだろうし、そのような予防接種の判断を一つ一つする余裕や相談先も無いだろう事実だ。無料であったり、受けないと保育所に預けられなかったりなどの理由で、時間に追われあまりよく考えることもできずに自分の子どもに予防接種させているのが現状であろう。

 新型コロナウィルスのような人間に害のあるウイルスの増殖は、人類の歴史上始めてのことではない。今でも猛威をふるっているので、今後もひどくなることも予想されるが、人類はそれ以上に歴史上初めて経験する大きな岐路に立たされているように考える。製薬会社が早急に開発した世界同時的ワクチン接種である。他国ではすでに開始されていて、数少ないが副反応が報告されている。自然科学は死病苦を一時的に追いやるための兵器を短期間で開発したわけではあるが、私たちは死病苦から解放されたわけではない。少なくとも、副反応がどのように起こるかの報告がちゃんとなされ、接種するかどうかの判断をそれぞれが考えることのできる環境を作らなくてはならない。「障害」とは個人が持っているものではなく、社会との間にある「障壁」のようなものだと前に書いたが、例えば障害はワクチン接種によって個人の中で直接作られるという影響よりも、ワクチン接種をよく判断できずに全体主義的な数に抵抗することなく半ば強制的に打たされるようなディスコミュニケーションによって、その後に誤りを認めないような状況によって、その「障壁」は社会の中に形作られているのではないだろうか。

2020年12月19日 高橋淳敏

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