vol.9 引きこもり時事通信 Aug~Sep in 2014
引きこもりにまつわる、興味深い、気になる、疑問を持つ・・・etcのニュースをご紹介し、解説、感想、場合によってはツッコミ等を付記するコーナーです。(栗田)
☆安倍首相、フリースクール視察「多様な生き方、学び方を伝えることが大切」
http://futoko.publishers.fm/article/5382/
2014年09月10日 17:47
本日9月10日、安倍首相がフリースクール「東京シューレ」を視察した。
安倍首相は東京シューレのようすを視察し、不登校の当事者・経験者である会員、OB・OGと懇談。子ども若者からは「学校では自分が自分でいられなくなる感覚があったが、東京シューレに来て自分を取り戻せた」という話が出るなど、不登校の経緯や東京シューレで感じたことが話された。
安倍首相は子ども若者の話を受けて「生き方、学び方はさまざまであり、いろんな道があることを多くの人に知ってもらうことが大切だ」と話した。また、会員、OB・OGに向けて「みなさんがお話していることは社会のあり方を変えていくきっかけになることですし、いま悩んでいる人に勇気やチャンスを与えることだと思います」と話した。
フリースクールは、不登校の子どもなど学校外の居場所。全国に400団体~500団体あると言われている。
日本では1980年代に誕生したが、いまだ公的な位置づけはない。しかし現在、フリースクールをめぐる議論が政治・行政の場で活発になりつつある。今年5月、安倍首相の諮問機関「教育再生実行会議」の第五次提言では、フリースクールやインターナショナルスクールの在り方や制度的な位置づけについて議論を進めることが提言されていた。
また今年9月1日から、文科省史上初めて「フリースクール等プロジェクトチーム」が設置され、担当官も配置された。来年度の概算要求には「フリースクール等支援策」も計上(約1億円)されている。フリースクール固有の支援策も文科省史上初めてだった。
この記事には、安倍首相とフリースクールに通う子どもたちが一緒に撮影されています。これをほほえましいと受けるべきか、顔を引きつらせるべきかなかなか迷うところですが、その背景にあるのは、この「フリースクール等プロジェクトチーム」の存在です。ちなみに、この件にかんしては、大阪市内のフリースペース「なるにわ」のスタッフ山下耕平さんがブログで意見を寄せています。
☆安倍首相がフリースクールを視察 http://foro.blog.shinobi.jp/Entry/259/
山下氏の話によれば(カギカッコがブログからの引用)
「超党派の議員による『フリースクール環境整備推進議員連盟』は、2008年に発足し、その後、いったん解散していたが、今年6月に再結成されていた。政治情勢は急速に動いている」そうで、その中心メンバーは「親学推進議連の中心メンバーと重なっている。」そうです。
また「『親学』というのは、母性や父性を強調するなど、伝統的子育てを推進するというもので、2012年には大阪市で親学をベースにした『伝統的子育てで発達障害を予防する』という条例案が持ち上がり、発達障害に関わる当事者や学会から抗議が殺到し、撤回するという事態」もありました。
「現在、親学推進議連は、親学を推進する法案の提出を目指している。また、今回の内閣改造では、閣僚に親学推進議連の議員が多く入ったと東京新聞は報じている(2014.9.6)」とのことです。
「親学推進議連は、会長に安倍晋三、会長代行に高木義明、副会長に河村健夫、小坂憲次、事務局長に下村博文が入っている。安倍晋三をのぞき、全員がフリースクール議連にも属しており、フリースクール議連の会長は河村健夫、会長代行が高木義明だ。また、フリースクール議連の幹事長の馳浩と笠浩史も、親学推進議連に属している」とのこと。その研究は、次の記事と結びついているのでしょうか?
※あとこのフリースクール支援の予算に関しては、
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/08/28/1351650_4.pdf
上記サイトの11ページに記載されてます。
予算の用途としては、◆フリースクール等に関する調査研究98百万円( 新規)・フリースクール等に関する検討会
国内外におけるフリースクール等の教育制度及び運用の実態について調査を行い、今後の位置付け等について検討を行う。
・学校復帰や社会復帰を支援しているフリースクールを含めた学校外の不登校支援施設・機関による指導体制等の在り方に関する先進的調査研究の実施(略)いじめ防止対策推進法や不登校追跡調査の結果を受け、学校復帰や社会復帰を支援している。フリースクールを含めた学校外の不登校支援施設・機関による指導体制や先進的な指導方法については地方公共団体、NPO、民間教育事業者等に先進的調査研究を委託(18箇所)とのことだそうです。
☆異才発掘プロジェクト:できる子を支援 東大と日本財団
http://mainichi.jp/select/news/20140831k0000e040172000c.html
毎日新聞 2014年08月31日 14時24分(最終更新 08月31日 15時01分)東京大先端科学技術研究センターと日本財団が、突出した才能を持ちながら学校になじめない小中学生を支援し、社会をリードする人材に育て上げる「異才発掘プロジェクト」を始動させる。全国から約10人を公募で選び、一流の講師による授業を実施。教育界に風穴を開ける試みだ。
プロジェクトは、知能が高すぎて授業をつまらないと感じたり、同級生や教師との会話が成り立たなかったりして、不登校になりがちな子をターゲットに、長所を伸ばす手助けをする。
発明家のエジソンは学校になじめず自宅で母親が教えたといい、英米では突出した能力の持ち主を「ギフテッド」と呼び、特別な教育プログラムを提供するのが一般的という。一方、日本の特別支援教育には「できる」子に配慮したものがないのが実情だ。
プロジェクト責任者の中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)・同センター教授(人間支援工学)は「個性が強すぎて教育現場から締め出されてしまうような子にチャンスを与えたい。突出した能力が将来のイノベーションにつながる」と話す。
カリキュラムは月1、2回ずつ、同センターの教授や、芸術、スポーツなど各界のトップランナーによる授業、農業や工作などの実習にも取り組んでもらう。 年内にもスタートし、5年間の計画だ。(略)
ようするに、学校には馴染めないけれど、国益や企業に利益をもたらす子どもは優遇したい、ということなのでしょうか。逆にいえばそれほどじゃない場合は放置、なのでしょうか・・・?
昔は確かに、学校に馴染めなければ全ての社会に馴染めないという偏見があったと思いますが、しかし、いまのこの政策はいったい何を産み出すものなのでしょうか。なんとも頭の中はクエスチョンだらけとなりました。