vol.5 引きこもり時事通信 Mar~Apr, in 2014
引きこもりにまつわる、興味深い、気になる、疑問を持つ・・・etcのニュースをご紹介し、解説、感想、場合によってはツッコミ等を付記するコーナーです。(栗田)
県立医大:知的障害ある若者採用 念願の夢へ第一歩 保育補助や総務に /奈良
毎日新聞 2014年03月24日 地方版
http://mainichi.jp/area/nara/news/20140324ddlk29100263000c.html
◇「誰もが働きやすい職場」目指し
県立医科大(橿原市)に24日、県立高等養護学校(田原本町)を今春卒業したばかりの若者4人が採用される。知的障害がある4人は、職員用の保育園や総務課への配属が決まっており、「一生懸命に頑張りたい」とやる気をみせる。知的障害者を初めて雇用する大学側も「誰もが働きやすい職場をつくるため、支えていきたい」と意欲的だ。【矢追健介】
「保育士になるのが夢なんです」。石原理江子さん(18)は大学に隣接する職員用の「なかよし保育園」で、保育補助の仕事を担当する。子どもたちと朝一緒に歌うのが一番の楽しみ。知的障害者の枠は一般に少なく、採用が決まった時には家族みんなで喜んだという。中学時代からの念願の夢に向かい、一歩踏み出す。石原さんと同じ職場になる福田菜々美さん(18)も子どもが好きだが、「人間関係が苦手」と不安を口にする。補佐する保育士の柏田麻理奈さん(22)は、正式採用前の研修をみて「最初は緊張していたが、笑顔も増え、作業も丁寧」という。
(略)
村田課長補佐は「5人が足跡を残すことで、次の世代につながればうれしい。実習や雇用を今後も受け入れ、こうした出会いを広げたい」と意気込む。高等養護学校で進路指導を担当する安井昇教諭(49)は、生徒の実習を見守ってきた。「卒業生が周囲の期待に応えている姿をみるのはとてもうれしい。周りの支援があってここまで来たことを忘れないでほしい」(略)
障がいを持つ人の雇用を増やし、義務化させる流れが進んでいます。これそのものは喜ばしいことではあります。とにかく障がいがある、というだけで労働できないと切り捨てられてきた歴史がありますし、見えにくい障がいのある人には「努力が足りない」と見なされてきた歴史もあります。
しかし他方で何か引っかかる問題があります。それこそ「障がい者として認定されなければまっとうな仕事にありつけない」という逆説的な事態を産み出されつつあると感じるからです。さらに真面目な障がい者とそうではない障がい者といった具合に政治が勝手に区分けしていくのでは?とも危惧を覚えます。それこそある種の男性が女性を憎悪する理由として「自分たちの仕事のパイを奪った」という発想があるとのことですが、そのような憎悪が障がい者の人に向けられたとしたらそれこそ恐ろしい。そもそもそのような筋違いの憎悪を持つことそのものが差別ですが、このような発想が最近ますます我が物顔となる、ないしはそのような発想を広がらせて、構造の問題を見えなくさせていると思えてなりません。
日本一有名なニートが語る、シェアハウスのセックス事情
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140324-00000170-cakes-life
2014年03月24日
(略)僕が最初の発案者ということでよく相談を受けたり取材を受けたりする。そこでシェアハウスに住んでいるとよく聞かれる質問ナンバーワンは「みんなオナニーとかどうしてんの?」だ。 シェアハウスといっても寝る部屋は個室になっているタイプと、相部屋(ドミトリー)のタイプの二種類がある。僕はシェアハウスの個室に住んでいるが、個室だったらドアを閉めきっていれば、よっぽど奇声を上げたりしない限り特に問題なく用を済ませることができる。(略)オナニーはまあいいとしてセックスはどうしてるのかというと、シェアハウスを出る理由として「恋人ができたから」というのはときどき聞く話だ。 僕は昔大学の寮に住んでいて、そのときのだらだらした暮らしが居心地が良かったので今もシェアハウスをやっているようなものなんだけど、僕がその寮を出たきっかけも付き合っている女の子ができて、人目をはばからずにイチャイチャできる場所が欲しい、という理由だった。 だけどそのときの僕は、個室も欲しいんだけど、友達が集まるたまり場としての寮から離れるのもすごく寂しくて、結局その時借りた部屋は寮の3軒隣にある安いワンルームマンションだった。そこで昼間は寮に行って友達と遊んで、夜は自分の個室に帰って寝る、という生活をしばらくしていたけれど、あれはなかなか良い生活だった。 (略)結局多くの人がシェアハウスに求めているのはいろんな人が集まって団欒する「リビング」とか「たまり場」とかいった機能なので、個人の部屋は別に確保しつつ近所のシェアハウスに遊びに行くというのはなかなか良い利用方法なんじゃないかと思う。人間が家に必要とするものを一軒の家の中で完結させる必要はないわけで、町全体を一軒の家のように考えて複数軒の家を利用するという流れはこれから増えてくるだろう。 (略) 一般的に「家族」というものは性的関係をもとにして始まるけれど、年を経るにつれだんだんセックスから離れていくものだ。「家族で一つの家に暮らす」か「一人暮らしをする」というのが今まではポピュラーな住み方だったけど、そんなにセックスのことを考えなくて良いとすれば、友人同士のシェアハウスみたいないろんなタイプの「家」が普通に選択肢として上がってくるんじゃないだろうか。 (略)
これは記事ではなく、エッセイですが、あんまりニュースタートでは語られる題材ではなかった(寮に住んでる人同士ではしているかもしれませんが)のですが、いわゆる性的なつながりをもつ「親密な関係」と、そうではない関係、でもどちらも捨てがたいというときに、シェアハウスが果たしうる役割が書かれててなかなか含蓄深いです。ただそこで親密な関係(性というだけでなく、家族機能に育児、介護が抜けるのは、男性が書き手だからなのか?)ではない場を保つ工夫は相当必要ではないかと思います。それこそ親密というかむしろ緊密な関係を持ったらその維持にかかり切りにさせられる社会構造があり、閉じられた家族しか築き得ない状況が現在はあると思います。
精神的に孤立、進学断念
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=95346
(2014年3月25日 読売新聞)
(略) 仙台市在住の秋保あきほ秀樹さん(25)は、16歳から22歳まで、6年にわたって認知症の祖母を介護した。当時は、祖母と母の3人暮らし。母は生活を支えるために働きに出ていた。
認知症の症状が進んだ祖母は、しばしば大声を上げることもあった。ホームヘルパーも頼んでいたが、祖母の体調がよくないときは、秋保さんが高校を休んで付き添った。ケアマネジャーは、施設への入所を勧めたが、祖母はデイサービス施設に通うことさえも嫌がった。
睡眠不足で遅刻が増え、授業中によく居眠りをしていたという秋保さん。「一番つらかったのは、同世代の相談相手がいなかったことです」と打ち明ける。級友に介護の話をしても、悩みを理解してもらえない。教師に相談しても、解決策は返ってこない。
精神的にも体力的にも限界を感じ、高校2年生の3月に休学した。自分が大学に行けば、昼間に祖母の面倒をみる人がいなくなると考え、進学を断念。高校はそのまま退学してしまった。祖母は3年前に亡くなった。(略)しかし実際は、過大な責任を負うことになる場合が少なくない。友人と過ごしたり、勉強したりする時間が奪われ、進路選択の幅が狭まることもある。同世代の友人には「別世界の悩み」なので、相談相手が見つけられず、精神的に孤立するケースもある。「在宅介護する家庭が増える一方で、これまで介護の主な担い手だった専業主婦は減っている。今後、こうした若い介護者は構造的に増えていくだろう」と渋谷さんは指摘する。
イギリスでは、1980年代末から、18歳未満の介護者を「ヤングケアラー」と名付け、支援を行っている。「ケア」の中身は、高齢者介護だけではなく、病気や障害を持った親きょうだいの世話なども含む。同国の支援団体「子ども協会」のヘレン・リードビターさんが先月来日し、東京都内のシンポジウムに出席して実情を報告した。同国の2011年の調査によると、18歳未満人口の2%に当たる17万人のヤングケアラーがいるという。(森谷直子)
引きこもっている、あるいはニートとみなされる人の数割は、家族介護にかかわってきているのではないか、と私自身の経験でも感じます。今後社会的な接点を奪われている事態と家事、介護という関係を考えてみたいです