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直言曲言 第152回 「遠心力」

By , 2006年2月6日 4:47 PM

子どもはもともとは親の体の一部から生まれた。父親と母親がセックスをして、父親の体液が母親の胎内に流れ、精子と卵子が結合して、新しい生命が生まれた。親は子どもを一生懸命に育て、やがて自意識も目覚め、反抗心も育つようになってくる。もちろんこうなれば、親と子はそれぞれ独立した個体である。子どももまた成長して、独立し、やがて子孫を生まねばならない。そのために、子どもは親の勢力圏(重力圏)から離れて『自立』しなければならない。

このことは惑星(地球)と衛星(月)それに恒星(太陽)の関係になぞらえられるかもしれない。衛星は惑星から生まれて、生長すればやがて太陽系の惑星に育っていく。そのことは、衛星独自の重力圏を持ちつつも、やがて惑星の重力圏も外れて、太陽の重力圏に入る。太陽系を公転する惑星の一つになっていくことを意味する。引きこもりとは、この重力圏の移動がうまくいかず、衛星がいつまでも惑星の重力圏に留まっていることを意味する。惑星も永遠の生命を保証されているわけではないので、早く衛星を自立させ、切り離してしまわなければともだおれになってしまう。

衛星が生長して独自の重力圏を持つようになると、自然に太陽系の重力に吸引され太陽系の惑星になっていく。これを人類社会に戻して説明すれば、社会的引力が働くことによって次第に親から自立していくことになる。ところが、この社会的引力(太陽系の重力)が低下したのか、親の引力と社会の引力の均衡点から先に、社会の重力のほうが働かなくなってしまった。これでは、いつまで経っても子どもは親から自立できず、社会にでて行けない。これを引きこもりというのだが、なぜこんな風になってしまったのかは分からない。ひょっとすると、豊かで贅沢になった子どもが増えすぎて、社会的な飽和力に達してしまい、社会のほうが受け入れ能力を超えたので『通せんぼ』をしはじめているのかもしれない。

いずれにしても、子どもがいつまでも自立できないでいると困るので、親は必死になって子どもを切り離そうとする。そのとき利用しようとするのが『引きこもり支援団体』である。いわば宇宙空間における宇宙船基地あるいは、たまたま近くを通りかかった別の惑星か彗星みたいなものである。宇宙船にしろ、別の彗星にしろ独自の重力をもってぃる。おまけに他の若者が集まっているものだから余計に重力は増している。こうした宇宙船から、時折親惑星の依頼を受けて発射されるのがレンタルお姉さん・お兄さん(訪問部隊)である。

ニュースタート事務局関西では、それをNSP(ニュースタートパートナー)と呼んでいる。子どもたちは、こうして訪問するNSPや宇宙船に集まっている若者たちの引力を利用して、親の重力から離れ、やがて太陽系の一惑星として旅立っていく。いわば、子どもたちにとってニュースタート事務局は旅の途中の一つの立ち寄り基地のようなものである。『鍋の会』というのをやっているが、別に旅立ちのためのエネルギー補給ではない。若者達を集めて、引力を高めようとしているだけだ。ニュースタート事務局の引力が高くなりすぎると、太陽系の引力を利用して社会人になることを忘れてしまい『いつまでもNPOに留まる』という人が増えかねない。多少は良いのだが、すべてがそんな人になると当初の目的からして本末転倒になる。ニュースタート事務局にとって、自らの引力の強さを調節することも大事な仕事になる。

添付図を見れば親子の位置関係やニュースタート事務局や社会の重力関係などがわかるだろうか? 人間は本来このように生長していくはずだという自然の摂理のようなものだから、誰にでも理解できる喩えのようなものだ。しかし、引きこもり支援団体の支援はいつも必ず成功するものではない。そのとき、親はどのように理解して、もう一歩の努力をどのようにしなければならないか?物体間に働く重力には引っ張り合う力としての求心力と、お互いに遠ざけあおうとする力としての遠心力が働く。子どもを親の重力圏から切り離し、社会の引力圏に解き放とうとするときには当然、遠心力を働かせなければならない。時々、遠心力と求心力の区別ができない親御さんがいるのを見かけるのである。
2006.02.06.

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